29日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、米経済の先行き警戒感が強まったことから急落し、前日比315・79ドル安の1万2266・39ドルで取引を終えた。下げ幅は今年2番目。前日と合わせて427ドル下げた。
米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が巨額の評価損を計上し、信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題に歯止めがかからないとの不安感が広がった。さらに消費や製造業関連の経済指標が悪化したことも響き、ほぼ全面安の展開となった。
商品相場の高騰によるインフレ懸念も投資家の買い控えにつながり、下げ幅は一時、358ドルに達した。市場関係者は「悪材料ばかりで、週明けにも不安を残す市場環境となった」(米投資会社)としている。(共同)
円高の影に「チャイナ・マネー」 複雑な通貨ゲームから引用。
ドルに対して一進一退を繰り返してきた
円高に弾みがつきそうだが、円を押し上げるのは米国の利下げだけとはかぎらない。伏兵は「チャイナ・マネー」である。
長年、ロンドンを拠点に国際マネー動向を観察してきた国際金融アナリストのA・シムキン氏が打ち明ける。「チャイナ・マネーが対日証券投資を活発化させている」。
シムキン氏の調べによると、ロンドンからの対日証券投資は2007年後半で13兆5000億円(2006年後半は6兆4200億円)と2倍以上に増えた。「この多くが北京を源とする資金で、ねらいは
円高促進」と同氏は推測する。
ロンドン金融市場は、2001年9月の米中枢同時テロ後に米国で制定された「愛国者法」による外国資金の監視を嫌ったアラブ産油国や
中国の政府機関、国有企業の資金が集中している。それらの資金運用を米欧の金融機関や投資ファンドが引き受け、ロンドン経由でニューヨーク市場などに投資してきた。
そうすると、米国の監視当局からマネーは「英国籍」とみなされ、それ以上身元を米国から直接追求される恐れがなくなる。
中国は1兆5000億ドル以上もの外貨準備の約65%を米国債などドル資産で運用してきたが、ドル安が進めば外準という国富が目減りするため毎月平均で300億〜400億ドル増える外準の多くをドル資産以外に分散投資する戦略を進めている。その一環で
中国政府は昨年、政府系ファンド「
中国投資有限責任公司(CIC)」を立ち上げた。
CICの高西慶総経理(社長)はこの2月中旬に来日し、日本の金融・証券界代表と会った。日本側出席者によると、高総経理は「運用残725億ドルのうち3分の1はアジアで運用し、アジアでの6分の1を日本に投資するつもりだ」と説明したという。
こうみると、
中国の日本買いの規模は限られてくるがCICはあくまでも
中国の政府系資金のほんの一部を請け負っているだけである。
中国はこれまで巨額の余剰資金を石油資源など国家戦略として使ってきた。対日工作は小規模な株買いと考えるのはいかにも甘い。
中国では石油価格上昇などによる影響でインフレ圧力が高まっている。
中国は金融市場が未整備なことや開発が遅れている内陸農村部への打撃を避けるため、金融引き締めには限界がある。このため人民元を高めに誘導して、輸入物価の上昇を抑制する必要に迫られている。現に人民元相場を管理する
中国通貨当局は昨年人民元を約7%上昇させ、ことしはさらに年間10%以上のペースで切り上げている。
しかし、人民元高は国内の固定投資と並ぶ高度成長の牽引(けんいん)車、輸出を直撃する。ライバルの円は人民元に対してレートが下がってきた。この基調がさらに強くなると
中国製品は競合する日本製品に比べて競争力が後退する恐れがある。
「
中国には
円高がどうしても必要なはずだ」(シムキン氏)。
円高を望むのは米産業界も同じ。日米中の通貨ゲームはいよいよ複雑になりそうだ。(編集委員 田村秀男)
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